「SEKIRO: Shadows Die Twice」シネマティック・スコアの収録について

Jerry on 2021-04-09
「SEKIRO: Shadows Die Twice」のカットシーン楽曲は、天誅シリーズの作曲家であるMega-Alpha Inc.の朝倉紀行さんが監修し、東京で録音されました。

株式会社フロムソフトウェアが制作するアクションアドベンチャーゲームは、16世紀の戦国時代の様々な戦いや衝突をダークファンタジーのレンズを通して再構築したものです。今回の対談では、「SEKIRO」のカットシーンで使用する楽曲を収録する際の共同作業について、朝倉さんにお話を伺いました。

APPARITIONS

天野清継さんとのコラボーレションの中で過去に「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 維新激闘編」があり、そしてそれは「立体忍者活劇 天誅サウンドトラック」まで継続しました。こうした歴史的な物語に音楽にスコアをつけていく作業を、ギタリストの方と行うというのは、どのようなものなのでしょうか。

朝倉 紀行さん: 確かに、私以外の過去の作品で「和」や「日本」を表現する音楽では、ギターを使った音楽作品はほとんど見られない。それこそが、私の唯一無二の音楽スタイルで、「和」と「日本」に「西洋」を加えたアジアの無国籍プログレッシブ音楽なのです、それは、「和」と「日本」に「西洋」のビートを加えるという意味です。ビートを出すために、アコースティックギターでアタックの強いストロークでビートを出します。

「隻狼」という名は、彼が左腕を戦闘で失った際につけられたものです。彼は、意識不明の状態で、年輩の忍に寺まで連れていかれます。その忍は仏師で、彼が目を覚ますまで、ずっと仏像を彫っていました。目を覚ました狼は、仏師から木と金属で作った忍義手を、彼の「牙」として授けられます。仏教上の修行あるいは苦行といった価値観が、「SEKIRO」の設定上、その忍義手に現れていると考えるとすると、その映画音楽のようなスコアの中に、密教の詠唱を盛り込んだアプローチというものは一体どのようなものであったのでしょうか。

密教のVoice Sampleを使用して、ダークで怖い「怨念」を表現したかった。「怨霊」("Apparitions")ではRobin Dupuy のCello と弦一徹のViolin の怖いアンサンブル、また25年前のKurzweil・K2VX のCD-Rom を読み込み直して、密教徒のVoice Sample が恐怖を更に煽りました。

「変若の御子たち」("Children of Rejuvenation")の幼い娘のVoiceは、最初フロムが用意した声優Sample があまりにピッチが悪く使用できず、後で私の娘でレコーディングし直した歌声です。まぁ、それは、とても短いフレーズだから誰も気に留めてない箇所です。

「ぬしの白蛇」("Great Serpent") でも25年前の Kurzweil・K2VX のCD-Rom を読み直しましたが、それとは逆に最新のNaitive Instruments のStrings Soft Synthesizer も使用しており、新旧のシンセのアンサンブルです。

SCULPTOR OF THE DELAPIDATED TEMPLE

Mega-Alpha Inc.は、弦一徹ストリングスさん、そしてRobin Dupuyさんと、天誅4 オリジナルサウンドトラックの収録でご一緒されていました。 今回のカットシーンにおけるスコアのレコーディングはどうだったか、教えていただけないでしょうか。

「大忍び」 ("Great Shinobi") の弦一徹Strings Section の演奏は素晴らしく、私の意図する恐怖とスピード感の融合が表現できた曲です。「ぬしの色鯉」("Great Coloured Carp") でも弦一徹Strings Section の演奏が聴けます。金管楽器とのアンサンブルです。「密謀」("Conspiracy") ではContrabassをフィーチャーしました。当初は最新のソフトで演奏してみたのですが、やはり生のContrabass 演奏が曲のフィーリングに合っています。

「荒れ寺の仏師」("Sculptor of the Delapidated Temple") でこそRobin Dupuy の独特のCello演奏が聴けます。彼はフランス人で、15年程前に東京で知り合いました。彼は自分で「私はジプシー出身だ」という通り世界中のいろんな所に旅した経験があり、5年程前にはインドに行き、日本に帰国して直ぐ私と会い、「Mr.Asakura, インドは12音階ではないんだよ、無限の音階だ」と二人で、インドのあまりの奥の深さに半分呆れて、なぜか笑った。彼は、弦一徹 Gen Ittetsu、天野清継 Kiyotsugu Amanoと同じように、日本のトップシンガーの演奏サポートをしている。



GREAT SHINOBI

FromSoftwareが制作してきたその他の作品を別として、「SEKIRO」は日本の戦国時代を舞台としています。三味線は日本の伝統楽器を代表するものとして、広く認識されていますが、この三味線の楽器としてのユニーク性や長所について、お聞かせ頂けないでしょうか。

朝倉紀行さん: やはりなんと言っても、音色の存在感でしょう。 良い意味で、全体の中でも混ざらない強烈な存在感があります。基本的に和音は出せないリード楽器であるから、バッキングできないのも全体に混ざらない理由かも知れません。

「天誅4」では、津軽三味線小山流三代目の小山豊さんとコラボレーションされていました。 どのようにして、小山さんと知り合ったのか、そのきっかけについて、また天誅と「SEKIRO」でどのようにコラボレーションしようとしたのかについてお話頂けないでしょうか。

三味線には4種類がありますが、私が好きで、私の作る音楽に合う種類は津軽三味線です。音が太く、強いアタックでビートを出せる楽器です。その津軽三味線の第一人者が小山会です。その小山会小山流三代目が小山豊なのですが、彼とどうやって知り合ったのかよく覚えていません。。

確か、15年程前に彼がエレクトリックな三味線で、ロック・バンドをやっていて、そのライブを見たのが初めてだったのかも??多分。。。

邦楽・雅楽をやる人でも、洋楽を聴いて育った人はいますが、ちゃんとバンドをやっている人は少ないので、とても興味を持ちました。その考え方もそうですが、日本の伝統音楽には、「間」というタイム感覚がありますが、この雅楽・伝統音楽だけしか知らないと、ピッチやリズムが悪かったりするケースがあります。

しかし、西洋音楽のリズム感や、いわゆるスコアでいう縦の線を理解してる演奏家は、ピッチの面でもリズムの面でもちゃんとアンサンブルできる演奏家です。 邦楽・雅楽の演奏家の中で、それをできる数少ない演奏家を私は知っています。そして、私はそういう優秀な演奏家とレコーデイングしています。

小山豊ももちろんその一人ですが、彼とのレコーディングは、盛り上がり部分に、更にパッションがほしい時に、数回重ねてダビングします。基本的にアンサンブルではなく、ユニゾンで4〜6回重ねます。ユニゾンにこだわるのは、より強いビート、アクセントがほしいからです。一度に4人でも6人でも演奏家を呼べば良いものではありません。彼のグルーブに合わせるのは彼本人が4回重ねるのが良いに決まってます。

(「大忍び」の2’23”〜2’29”の6秒だけだが、サビに向かって行く盛上りで、緊張感を増幅させるために三味線を使用。音楽的に言うとDominantの部分。)

ところで、三味線の皮は猫の皮を張ってあるのが主流だと知ってましたか?これもユニークですか(笑)

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE vinyl soundtrack by Laced Records is available for shipping in Europe through HighScore Records. The 3-CD physical release can be purchased through CDJapan. Images property of FromSoftware.

なお、「大忍び」のレコーディングの様子や未発表曲は、朝倉紀行さんのFacebookページでご覧いただけます。
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